- HOME>
- 痔
痔とは?

痔は肛門に生じる病気の総称です。国民病とも呼ばれるほど一般的な病気で、便に鮮血が混じる原因の多くが痔によるものです。主な症状は出血や排便時の痛み、不快感などですが、進行すると日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
一方で、痔の症状と似た症状を示す他の消化器疾患(大腸がんや炎症性腸疾患など)もあるため、正確な診断が重要です。痔を患っている方は、血便が出ても痔によるものと思い込んでしまうことが多いので注意しましょう。
痔の種類と症状
痔には主に内痔核、外痔核、裂肛、痔瘻などの種類があり、それぞれ症状や原因が異なります。多くに共通する症状は以下の三つですが、症状は痔の種類や進行度によって異なり、複数の症状が同時に現れることもあります。
- 出血(排便時に鮮紅色の血が付着する)
- 排便時や着座時の痛み
- 肛門周囲のかゆみ など
いぼ痔(内痔核・外痔核)
肛門の縁や、内側(直腸下部)がいぼ状に腫れることで生じる痔で、主な症状は脱肛、痛み、出血です。脱肛とは、排便時に痔核が肛門の外に押し出される状態を指し、脱肛の程度は様々で、すぐに戻るものから常に出ているものまであります。また、出血の程度も個人差が大きく、軽度なものから重度で貧血を伴うものまで見られます。
切れ痔(裂肛)
肛門の出口付近が切れた状態で、主な症状は排便時に起こる強い痛みです。肛門が切れる際に鋭い痛みを感じ、この痛みは排便後も数時間続くことがあります。出血はいぼ痔と比べると少なく、通常はトイレットペーパーにつく程度です。痛みのため排便を我慢してしまい、便秘を引き起こすこともあります。慢性化すると肛門が狭くなり、排便がさらに困難になる場合もあります。
痔ろう(痔瘻)
肛門内側の皮膚に穴が開き、直腸とつながってしまった状態で、肛門周囲への細菌感染が主な原因となります。初期段階では肛門周囲の腫れと痛みを感じ、進行すると発熱を伴うこともあります。
痔ろうの内部には膿が溜まりやすく、完治せずに慢性化すると、痔ろうから常に膿や分泌物が排出され続けて下着を汚すことがあります。
痔の原因
痔の主な原因には以下のようなものがあります。これらの原因を考慮し、生活習慣の改善も含めた総合的なアプローチが痔の予防と治療に重要です。
- 便秘や下痢:硬い便や頻繁な排便で肛門に負担がかかる
- 長時間のトイレ:血流が悪くなり、静脈うっ血を引き起こす
- デスクワークなどの座り仕事:肛門周囲の血流が悪くなる
- 妊娠・出産:骨盤内の圧力上昇や出産時の負担
- 加齢:肛門括約筋の緊張低下
- 肛門への細菌感染:下痢の便が肛門の内側にあるくぼみに溜まる など
痔の検査
痔の診断には以下の検査を用います。痔の症状と似た症状を示す消化器疾患も多いので、それらとの鑑別にも細心の注意を払います。
肛門診察
視診・触診・指診などによって肛門周囲の状態を確認します。触診・視診では指を肛門に挿入して内部の状態を確認しますので、痛みが最小限になるように注意します。
肛門鏡検査
専用の器具を使って肛門の内側を観察します。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
必要に応じて行い、他の疾患(大腸がんなど)との鑑別に用います。特に血便は大腸がんや炎症性腸疾患、急性腸炎(感染性腸炎)などでも生じるため、これらとの鑑別には大腸カメラが有効です。
痔の治療
痔の治療は、種類や程度によって異なりますが、主に以下のような方法があります。当院では軽度な痔への保存的治療を行っており、その他の治療が必要な場合は肛門科のある提携医療機関へご紹介いたします。
保存的治療
比較的軽度ないぼ痔、切れ痔を対象に行います。
- 軟膏や坐薬の使用
- 生活習慣の改善(食事療法、排便習慣の改善など)
- 温熱療法(温浴など)
- 肛門周辺の衛生維持 など
硬化療法(ジオン注)
痔核周囲に特殊な薬剤を注射し、痔核を縮小させます。日帰り、あるいは数日ほどの入院にて行います。
ゴム輪結紮術
小さな輪ゴムで痔核を縛り、壊死させて取り除く方法です。壊死した病変部は、輪ゴムと同時に1週間ほどで自然に脱落します。
外科治療(手術)
保存的治療で改善が見込めない痔や、再発を起こしやすい痔ろうの治療時に検討します。