- HOME>
- ヘリコバクター・ピロリ菌
ヘリコバクター・ピロリ菌とは?

ピロリ菌は、ヒトの胃に住み着く細菌の一種であり、正式名称を「ヘリコバクター・ピロリ菌」と言います。この菌は胃の中の酸性環境で生存できる特殊な細菌で、感染することで慢性的な胃炎を引き起こします(ピロリ菌感染症、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)。
ピロリ菌への感染、および炎症の発生があっても自覚症状がないことも多いですが、長期間の感染は胃粘膜を徐々に傷つけ、胃・十二指腸潰瘍や胃がんなど、様々な胃の病気のリスクを高めます。
ピロリ菌感染症の症状
ピロリ菌感染症自体には特異的な症状がなく、多くの場合は無症状で経過します。しかし、感染によって引き起こされる慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍などの胃の病気によって以下のような症状が引き起こされることがあります。
ただし、これらの症状はピロリ菌感染以外の原因でも起こり得るため、症状だけでピロリ菌感染を判断することはできません。
- 胃もたれ
- 胸焼け
- みぞおちの痛み
- 吐き気
- 食欲不振
- 頻繁なゲップ
- お腹の張り(腹部膨満感) など
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染経路
ピロリ菌感染症の主な原因は、ピロリ菌を含む水や食べ物を口から摂取することです(経口感染)。具体的には以下のような感染経路が考えられています。
日本では衛生環境の改善に伴い、若い世代でのピロリ菌感染率は低下傾向にありますが、高齢者の感染率は高いままです。そのため、当院では患者さんの生活環境や家族歴も考慮したうえで、適切な検査と治療を提案しています。
汚染された水の摂取
ピロリ菌に汚染された水を飲むことで感染する可能性があります。特に上下水道が整備されていない地域での感染が懸念されます。
ピロリ菌感染症の検査
ピロリ菌感染症の診断には以下のような検査方法があります。ピロリ菌の検査は基本的には自費となりますが、胃内視鏡検査(胃カメラ)によってピロリ菌感染が疑われると判断された場合は、保険適用でのピロリ菌検査・治療が可能です。また、除菌治療後の判定検査も重要で、確実に菌が除去されたことを確認します。
内視鏡を使用する検査
- 培養法:胃粘膜の組織を採取して培養し、ピロリ菌の有無を確認します。
- 迅速ウレアーゼ検査:採取した胃粘膜組織にウレアーゼ試薬を反応させ、ピロリ菌の存在を確認します。
- 組織検査:採取した胃粘膜組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を確認します。
内視鏡を使用しない検査
- 尿素呼気試験:ピロリ菌が持つウレアーゼ酵素の活性を利用して、呼気中の炭酸ガス濃度を測定します。
- 抗体測定:血液中のピロリ菌に対する抗体を測定します。
- 便中抗原測定:便の中のピロリ菌抗原を検出します。
ピロリ菌感染症の治療
ピロリ菌感染症の治療では、主に抗菌薬を用いた除菌療法が行われます。数種類の内服薬を用い、体内から菌が排除されるまで内服治療を続けます。
一次除菌
胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)と2種類の抗菌薬の服用を1週間続けます(朝と夕の1日2回)。
判定検査
除菌治療後、2か月以上経過してから判定(呼気検査)を行い、完全に除菌されたことを確認します。
二次除菌・三次除菌
一次除菌が不十分だった場合は、薬の組み合わせを変えて再度内服治療を行います。ほとんどの方が二次までで除菌が完了しますが、稀に三次以降(自費)の除菌治療が必要になることもあります。
ピロリ菌検査・治療への保険適用について
胃カメラ検査を行って「慢性胃炎(※)」と診断された場合、ピロリ菌の検査・治療には健康保険適用が可能となります。検査の順番を間違えると自費診療となってしまいますので、くれぐれもご注意ください。
詳しくは受診時に医師へお気軽にお尋ねください。
(※)萎縮性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍などのピロリ菌感染が強く疑われる疾患が該当